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不安もいっぱいあるハズなのに、落ち着いているのです。
帰ったら、ロコとモコに報告しよう。
きっと、喜んでくれる。
わたしが嬉しくて恥ずかしい気持ちを伝えれば、
全身で受け止めて、それを恥ずかしがることなく表現してくれるだろうな。
「ただいま」
わたしの部屋に戻ると、誰もいませんでした。
そういえば、ロコとモコはわたしの〝気持ち〟だったっけ。
そう思い出して、2人を呼ぶことにします。
「もう出てきていいんだよ、ロコ、モコ」
ロコとモコは、姿を現しませんでした。
まるで、そこには何もなかったかのように、
わたしの部屋にはわたしの声だけが響いていました。
ううん。彼女たちはわたしの隣にいる。
ベッドに座ったわたしの隣に、体をぴったりと寄せて、
わたしの言葉を待っている。そんな気がします。
「わたし、ちゃんと伝えたよ。……ちゃんとできたかな?」
誰もいないのに、わたしは聞いてみました。
すると、静かな部屋のどこからか、聞こえてきました。
「十分なくらいさ。よくやったよ、想」
「どんどんどんどん暖かくなって、ぽかぽかふわふわぁ! なの」
「ロコ! モコ!」
周りを見渡しても、誰もいません。
それでも、ロコとモコの気配を感じます。
やっぱり、そばにいてくれたんだって実感できます。
聞こえるのは声だけ。それでも、わたしは嬉しいのです。
「織菜ちゃん、返事してくれるって。ちゃんと考えてくれるって言ってくれたよ」
「知ってるよ。わたしたちは想の〝気持ち〟なんだから」
「ちゃんと伝わったよ、こころ」
「うん。嬉しいの。でも、不安でもあるんだ」
「大丈夫なの。きっと、大丈夫なのぉ」
「そうだよ。織菜ちゃんの気持ちは分からないけど、きっと大丈夫だって」
励ましてくれる存在がいる。わたしはそれが嬉しくて仕方ありません。
改めて、ロコとモコがいたからわたしは前に進めた気がします。
「うん、ありがとう」
そう2人に告げて、わたしは瞳を閉じてベッドに倒れ込みました。
瞳を閉じて、目の前は真っ暗なハズなのに、きらきらと輝いています。
そして、走馬燈のようにロコとモコが姿を現しました。
何か言うわけでもなく。
ただ、わたしのことを見つめています。
わたしが手を差し伸べると、ロコとモコはわたしの手に触れます。
暖かい。
ロコとモコはそれはもう、無邪気な笑顔でわたしを見つめます。
そして、目の前のきらきらとした景色に溶け込むように、
混ざり合っていきました。
ハッとして、起き上がり時計を見ると、2時間くらい経過していました。
そして、時計のとなりに置いた携帯電話を見ると、チカチカと光っています。
折りたたみ部分を開いて、届いていたメールを確認すると、
そこには大切な人からのたった一言が添えられていました。
「仕方ないから付き合ってあげる」
わたしは誓います。
ずっと隠していた、抑えていた気持ちを出し惜しみしない。
わたしを見てくれる大切な人の前では、
隠したり抑えたりする必要はないのだから。
離れていた気持ちは、
わたしのココロはゆるりと混ざり合って、
やっと、1つになりました。
ココロコモコ その14
わたしは覚悟を決めて話し始めました。
「何なに? 急にどうしたの?」
「うん。織菜ちゃんはわたしが思ってる……ううん。それ以上に可愛い」
「え? あ、ありがと。……って、全然分かんないんだけど」
何を言われているのかわからない様子の織菜ちゃん。
無理もありません。わたしが勝手に話し始めたわたしだけのことだもの。
だけど、ここで勢いを止めちゃったら……わたしはまた後戻りしちゃいそう。
だから、わたしはやめません。
「聞いて、織菜ちゃん。わたし、言うから」
「う、うん。……何?」
「わたしね。……わたし、ずっと織菜ちゃんが好き、なの」
言った。言いました。ついに、言ってしまいました。
自分の口から言葉にしたら、ドキドキが一気に加速して、
わたしの躰全体に響くほど、激しく鼓動しています。
「うん。わたしも想のこと好きだよ」
「そうじゃなくって! ……その、わたしは織菜ちゃん、のこと」
これ以上、どういうふうに伝えたら良いのか分からない。
これがわたしにとって、精一杯の伝え方なのです。
「なるほど、ね。想はわたしのこと友達以上に好きだって言いたいの?」
「……うん。そう」
「ふぅん。まぁ……それは分かった。ちょっとだけでいいから考えさせて」
織菜ちゃんは座っていたブランコを小さく揺らして、空を見上げています。
何を考えているんだろう。何を悩んでいるんだろう。
こんなこと、成立するハズがないって私自身が思っているのに、
織菜ちゃんはいったいどんなことを想像しているんだろう。
「想」
「な、何?」
「ひとつだけ、確認させて。想はわたしの可愛いところが好きなの?」
「うん。他の人にはない織菜ちゃんの可愛いところ、好きだよ」
「可愛いところ、だけ? それって、見た目だけってこと?」
「えっ!? ち、違……うよ」
わたしが織菜ちゃんを好きになったのは、たしかに見た目なのかもしれない。
でも、好きになって、友達になって……一緒に過ごすようになって、
わたしはこの気持ちに気づいたのです。
好きになるきっかけってことだったら合っています。
それは、ちゃんと伝えなきゃいけない。
「は、はじめはそうだった。わたし、可愛いの好きだから」
「……呆れちゃうくらい、好きだもんね」
「でも、いまはそれだけじゃないよ。わたし、ずっと見てきたもん」
「見てきたって、わたしのこと?」
「そう。ずっと自分の気持ち抑えて、織菜ちゃんのこと見てきた」
わたしは、大好きな可愛いことの話題になると話が止まらなくなっちゃうから。
夢中になって話しちゃって、話題がそれだけになっちゃうから抑えてきたのです。
「だから、織菜ちゃんの素敵なところ……いっぱい感じていたんだよ」
「そっか。つまり、見た目だけじゃないってことだよね」
「そうだよ。……でも、これだけじゃダメなの」
「どういうこと?」
わたしの気持ちは……伝わったと思います。
けど、もうひとつ伝えなければならないことがあります。
それは……。
ココロコモコ その12
ココロコモコ その14
「わたしたちは、信じてるのぉ」
そう励ましてくれたロコとモコはお家でお留守番。
わたしは、学校の正門で織菜ちゃんを待っています。
朝はあんまり時間がないし、そういった話をする感じじゃなかったから。
だから、放課後に一緒に帰ろうって誘いました。
織菜ちゃんは委員会活動をしているので、
部活も何もしていないわたしが待つのは、いつものことなのです。
学校から外に出て行く生徒を眺めながらわたしは考えます。
どんな話をしたら良いのかなって。
昨日、ロコとモコに言われてからずっと考えているんだけど、
正しいと思える答えが見つかりません。
それはきっと、正解も不正解もないからなのかもしれません。
だからわたしは、チャレンジするつもりで織菜ちゃんと話すことにします。
相手を見て、会話のなかで分かることを、手探りで探すしか方法はないから。
友達だって言っても、大切に想っている相手だとしても、
分かり得る気持ちっていうのは、とっても透き通っているものだから。
「待たせちゃったね、想」
小走りでわたしのもとに来る織菜ちゃん。
きっと、わたしをすこしでも待たせないようにしようと走ってきてくれたんだ。
そんなところが嬉しくて、可愛らしくて素敵だと思う。
「ううん。そんなことないよ。さ、行こ」
わたしたちは、いつも待ち合わせをしている公園に向かいました。
やっぱり、思い入れのある場所だからこそ、
いろいろと話ができると思うから。
この場所なら、わたしの緊張も少しはほぐれるみたいだし。
「ブランコって、こんなにちっちゃかったかな?」
わたしと織菜ちゃんが並んでブランコに座ります。
そのとき、わたしは懐かしさに似た淡い寂しさを感じました。
「そう? わたしはそんなに小さいと思わないけど」
「うん。すごく久しぶりだから、かな」
「えへへ、実はわたしこのブランコに乗るのは久しぶりじゃないんだよ」
「え?」
「たまーにね。ここの公園に来たりしてるのよ」
「へぇ、そうなんだ」
知らなかった。織菜ちゃん、ここに来てたんだ。
やっぱり、知ってるようで、わたしは織菜ちゃんのことを知らない。
それは、わたしがわたしの気持ちを出していなかったことに
関係があるのかもしれません。
わたしは一歩踏み出して良かったと、このとき感じました。
でも、しっかりしないといけないところがあります。
ずっと、ずっと織菜ちゃんと一緒にいるためと思って、
捨ててきた大切な気持ち。わたしの前に現れたロコとモコの想い。
わたし、頑張るから。
見守ってて、ロコ、モコ。
ココロコモコ その11
ココロコモコ その13
嬉しそうに、満面の笑顔でわたしに言葉を伝えるロコ。
わたしがいま感じた、懐かしい気持ちが大事ってことかな。
「すっごくあったかいの」
「わたしらは想の感じた感情をそのまま感じるんだよ」
「それも身体が反応しちゃうくらいにね」とロコが教えてくれました。
わたしにとって懐かしいだけに思えた気持ちなのに、
2人はものすごく嬉しそうにしています。
「いま、想にとって必要なのはその気持ちだって言ってるんだよ」
「懐かしぃの。ずっと前にこころが感じていたハズなの」
「そうそう。懐かしいってこと意外にも感じたよな?」
言われれば、そう言われればたしかに感じていたかもしれません。
でも、これは……ずっと隠していたハズの気持ちなのだけれど。
「隠す必要なんてないんだって」
「うん。うん! 素直に出してほしいのぉ」
素直に。
この言葉がどれだけ重たくて、わたしの気持ちを抑えていたんだろう。
素直になって、嬉しい気持ちで話をして、その先は辛いことばかり。
だからわたしは、ずっと隠していたのに。なのに……ロコとモコは。
「もっともっと出していこうよ、想」
「もっと、ううん。モコはずっと、ぽかぽかしていたいの」
「「だから」」
素直になってみたら?
ロコとモコは、わたしの背中をそっと押してくれました。
本当に押してくれたわけじゃなくて、後ろからそっと…
そぉ~っと、ココロを押してくれたのです。
「うん」
わたしは決めました。
明日、想は織菜ちゃんに話をしてみます。
ずっと抑えてきた気持ちを、本当は喋りたかったことを。
これから先、ずっと織菜ちゃんと一緒にいたいから。
話をすることに決めました。
ココロコモコ その10
ココロコモコ その12
ひと息ついてからロコとモコに聞いてみました。
「2人はさ、何か好きな食べ物とかってあるの?」
これは、2人の名前が名前だけに、
やっぱりそれだと思って聞かずにはいられません。
実を言うと、名前を聞いたときからずっと気にはしていました。
「食べ物ねぇ。食べたことってないからわかんないよ」
「モコは、どれもこれも色鮮やかなのが好きだなぁ」
「へ?」
またひとつ、わかりました。
2人は食事をしないそうです。
そういえば、昨日から何か食べている様子は見ていないし。
気持ちの存在だから、食欲とかそういうのは無関係みたい。
だけど、腑に落ちないので少しいじわるしてみたいと思います。
「なんだ。てっきりロコモコが好きなんだと思ったのに」
「何だよ~それ。そんな食べ物があるのかよ」
「ロコちゃんとモコの名前がそのまま食べ物なの~?」
「共食いとか勘弁してよ……」
「いやだよぉ」
これでもかってくらいに呆れるロコと、
目を可愛くつむって、うつむいちゃったモコ。
思った気持ちを全部、その小さな身体で表現しています。
そんな姿に、思わずほっこりしてしまいました。
久しぶりだなぁ、こんなに穏やかな気持ちを味わったのは。
「それだよ、それ。それそれ!」
「うぅ~。気持ちいい、なのぉ」
「えっ!? ……何?」
とびきりの笑顔でわたしを見つめてくるロコとモコ。
急にどうしちゃったんだろう? なんだろう、気になる……。
ココロコモコ その9
ココロコモコ その11