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わたしは、あの女の兄を好きであることは間違いない。
その気持ちを認めた瞬間、わたしはわたしの嫌なところが目に付くようになった。
痛い言動、黒一色の服装、貧相な躰つき、ゲーム好きを超えたゲーム中毒者。
それこそ、目に付くものは恋愛の妨げになるものばかり。
わたしがこんなに自分を責めることは珍しい。けれど、責めたくもなる。わたしが好きでやっていたことだったり、どうすることもできないことが、わたしを苦しめるのだから。
彼の前では抑えているつもりなのだけれど、それが不自然でいて、それがまた嫌。我慢してどうにかなることでもない。だからわたしは、いつもどおりに変わらず過ごしている。
そう、わたし「黒猫」こと五更瑠璃は友人である高坂桐乃の兄にして、同じ高校に通う先輩である京……彼に恋をして、そのせいで目に付くようになってしまった自分自身のコンプレックスに悩んでいる。
世の中には、わたしが抱えているコンプレックスでも「それがいい」とか「ステータス」とか言う輩がいるみたいだけれど、あの雄はどうもメリハリのついた躰が好きみたい。
さらに言えば、「眼鏡をかけている」というのが必須らしいということ。「眼鏡をかけたまま」とか、どういう思考をしたらそんな検索をかけられるのかしら。本当、あの雄の考えていることが理解できないわ。
っと……いけない、いけない。興奮するとつい、いつもの調子が出てしまうわね。
わたしがどうしてこんなにもコンプレックスに悩んでいるのか。それは、明後日の土曜日に彼の家にお呼ばれされたから。妹のほうではなく、直接本人からである。
突然の誘いに驚いたのは確かだけれど、さらに驚かされたのは時間が夜であることと、その日は誰もいないということ。何でも、あの女が両親にいろいろと心配をかけたお詫びにということで、小旅行に出かけると言っていたわ。
そ、そんなことを急に言うものだから、わたしだって……その、いろいろと考えてしまうわけでしょう。高校生になったのだし、一緒にいる時間が増えたのだし。け、決していやらしいことは考えていないのよ!
……何をうろたえているのかしら、わたし。普段どおりに振る舞えば良いだけじゃないの。あの雄に限ってそんな度胸があるとも思えないし。そう。どうせ、退屈だから呼んだというところでしょう。ベルフェゴールにも断られて寂しい、とか。そんな様子を嘲笑ってあげることにしようかしらね。
うん。楽しくなってきたじゃない。明後日が楽しみだわ。